アーミッシュの生活に「美」を感じる人、感じない人

アカデミックな世界

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ウィスコンシン州滞在中、アーミッシュコミュニティ以外にも実は色々なところに訪問しました。
ガイド役は立正大学教授の浅沼茂先生と学生さん、そして名古屋大学の松下晴彦先生です。

浅沼先生も松下先生も専門は「教育学」。

訪問先は、マディソン大学であったり、先生方の恩師や友人のお宅。
素敵なホームパーティーに招いて頂いたり、大学授業に現地学生と一緒に参加させて頂いたり、ただの観光では経験できないディープな世界を覗きました。

一人でアーミッシュコミュニティーにフィールドワークに行っていた数日以外の時間を共に過ごし、私も学生の頃に戻ったように「学ぶこと」を楽しみました。いや、学生の頃は遊んでばかりいた気がします。はじめて真剣に「学びたい」と感じました。

余談ですが、アーミッシュをテーマに大学という場で研究をされている人は、実は日本にも結構います。アメリカにはもっといます。私は自分の体験をもとにした私的な学びをこのように綴っていますが、しっかり自分の学問として研究してみたいとも思うようになりました。

個展をきっかけにアーミッシュのことをアカデミックに研究されている方との出会いが増えて、最近では公開されている論文を読み始めてます。私の知らないアーミッシュのことがたくさん書いてあって、興味深く、シンプルに面白いです。今後は「アカデミックな観点でアーミッシュ文化を研究すること」に対してアンテナを張っていこうと思います。

Amish lifestyle is esthetic(アーミッシュの生活は美しいよね)

先生たちの研究旅行に同行していたため、必然的に「はじめまして」の出会いが多くありました。私の英語での自己紹介は、まだまだたどたどしいです。

でも、あることに気がつきました。

私の自己紹介に、多くのアメリカ人が興味を持ってくれることです。こんな自己紹介です。

「日本でアーミッシュのことを研究していて、アーミッシュの服をお手本にしたワンピースを販売していて、今回もアーミッシュに会いにアメリカに来ています。」

アメリカにくる日本人で、アーミッシュコミュニティ訪問を目的にしている人なんて、ほとんどいないはず。アメリカ人にとってもアーミッシュは未知な人たち。目の前の日本人とアーミッシュがつながっていることに、関心を抱いてくれるようです。

会話の糸口を探したい私にとっては嬉しいことで、アーミッシュについてのアメリカ人の意見や考え、経験をたくさん聞くことができました。

その中で、ある方が言った言葉があります。

「Amish lifestyle is esthetic(アーミッシュの生活は美しいよね)」

この言葉を受けて、浅沼先生が教えてくれたのは、アーミッシュの生活を美しいと感じるのは、受け取る側にその感性があるかないかによるということ。

浅沼先生もアーミッシュの生活に「美」を感じるタイプで、もちろん私もそっちのタイプです。でも、人によっては彼らの生活を見ても感性が刺激されない人もいます。

思い返してみると、日本人の反応も同じでした。私の撮影してきたアーミッシュの写真を見せても、特に感想を抱かない人と、ものすごく心を揺さぶられる人。面白いほど、二極化します。

もちろん、「美」を感じる感性に優劣はないと思います。ただただ、アーミッシュの生活に「美」を感じる人と感じない人がいる、というのはある意味で私にとっての学び・発見でした。

アーミッシュの生活の何が美しいのか

そこで、アーミッシュの暮らしを実際に目撃し、私の感性が刺激されたものを具体的に挙げてみようと思います。私が彼らの生活のどこに美しさを感じるのか、それはなぜか。個人的な感性・考えなので、おそらく、偏っているところがあると思います。「アーミッシュに肩入れしすぎでは?」という指摘には、反論の余地もありません。あしからず。

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洗濯物

乾燥機を使うのが一般的なアメリカ人。今どき洗濯物を外に干すのはアーミッシュくらいかもしれません。アーミッシュの洗濯物って、私から見たらアートそのもの。同じ物が綺麗に横に並んで干されているのには、理由があります。アーミッシュは洗濯する前に、種類分けをするから。ズボン、ワンピース、下着、タオル類、靴下類・・・。綺麗に種類で分けて、汚れが少ない物から順番に洗っていきます。そうすることで水を節約できるから。下着やタオル類を先に洗って、そのあとにドレス、最後に男性用のワークウェア。順番に洗うから、干すときもその順番がキープされます。そうすると、同じ種類がズラっと並んで干されることになり、見た目の統一感が生まれます。アーミッシュの人たちはまったく「美」をねらっていませんが、合理的に洗濯に取り組んだ結果、このような「アート」が生まれることになりました。

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看板やポスター、ゴミのない風景。赤い納屋。広い空。

アーミッシュコミュニティの風景は、どこでシャッターを切っても絵になります。主張の激しい看板やポスターがないこともフォトジェニックな一因かと思います。そして、納屋の壁は、たいてい赤いです。青い空と赤い納屋のコントラストがまた、美しい。アーミッシュの人たちは、本当に「物」が少ない生活をしています。だから必然的に、ゴミも少ない。大量生産・大量消費の追っ手はこの世界には入り込めませんでした。私たち日本人は昨今、断捨離に夢中ですが、アーミッシュコミュニティではそもそも捨てられるような短期で消費される物が流通しません。100円均一やファストファッションもありません。なので、捨てることに躍起にならなくて良いです。断捨離しなくても物がもともとないから、心が平和です。私たちの消費社会では周りには誘惑がいっぱい。ちょっと気をゆるめると家の中は物だらけになってしまいます。それでストレスを感じて断捨離に取り組むのですが・・・。

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「DIY」は趣味ではなく、日常

アーミッシュの人たちは、何かが欲しい、足りないと感じたときに、まずは「作る」という選択をします。私たちは、「欲しい→買う、足りない→買う」という発想ですが、彼らは「欲しい→作る、足りない→作る」という発想なんですね。日々の食卓に出てくる料理もできるだけ自給していますし、日々身につける衣服も自作。家具やおもちゃもできるだけ自作。「DIY」は趣味ではなく、日常です。写真は、子供が遊ぶための人形。アーミッシュのおばあちゃんの手作りです。「顔の部分が取れちゃってるから、後で補修しようと思ってるの」とおばあちゃん、言っていました。家にある物がほとんど手作り品であることも、私の感性を刺激する一因です。ちなみにこのおばあちゃん、アンティークのような足踏みミシンを踏んで、旦那さんのズボンを縫製中でした。

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自然光を大事にする

アーミッシュの人たちは電力会社から電力の供給を受けないようにしています。ガスや太陽光や風力などで自家発電。電気は貴重です。よって、自然光が一番の頼り。どこのアーミッシュの家に行っても、アーミッシュの運営するお店に行っても、室内は少し暗めでした。写真を趣味にしている人は実感があると思いますが、写真の美しさは「光」に左右されますよね。そして、ベストな光は「自然光」。我々の生活はもう、24時間明るいです。コンビニの明るさはすさまじいです。普段の生活では「自然光」を意識しないですが、アーミッシュはとっても「自然光」を大事にします。

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物への執着のなさ

私の中で衝撃的だったこと。それは、プレゼントがすぐに捨てられたことです(笑) と言っても、壊れて使えなくなった紙風船ですが。アーミッシュの学校に行ったときのこと、プレゼントした紙風船でバレーボールに興じていた子どもたち。でも、あまりの白熱のせいで風船が破れてしまいました。「これ、壊れちゃった」と言われ、「そうだね」と返答すると、目の前でゴミ箱に入れられてしまいました。心の中でちょっと驚きました。たとえ壊れたのだとしても、もらいものをそんなに簡単に捨てるか!?と。実は同じようなことがオハイオでも起きました。友達のアーミッシュの家の冷蔵庫に何やら大切そうなポストカードが貼ってありました。私が友達の赤ちゃんの写真を渡すと、冷蔵庫に貼ってあったポストカードを躊躇なくゴミ箱に捨て、赤ちゃんの写真を代わりに貼りました。私はそれを見て、「え? 大事そうな物なのにそんなに簡単に捨ててよいの!?」と心配になってしまったのをよく覚えています。この2つの出来事を「アーミッシュの性質」として一般化できるかは分かりませんが・・・。私は自分が傷つかないように、「アーミッシュに物をあげてもすぐに捨てられる可能性がある」と個人的に肝に命じています。
でも、この物への執着のなさ、潔さは、「嫌だな」とは思いません。逆に、清々しさすら感じます。簡素さ、質素さ、シンプルさが良しとされる価値観がベースにある人たちなので、当然といえば当然かも。この潔さには、驚きつつも感銘を受けました。
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時間をかけることをいとわない姿

アーミッシュの移動手段は馬車。出かけるときは馬を納屋から出してきて、バギーにつなぐという手間が必ずあります。移動のスピードもせいぜい30キロくらい(?)少なくとも原付バイクよりも遅いです。これだと、近所に買い物に行くのも親戚のおじさんに会いに行くのも一苦労です。でも彼ら、移動手段を変えようとしません。車がいかに早くて便利が知ってるのですが、敢えて持ちません。洗濯もそう。全自動洗濯機を使えば、ボタン一つで洗濯が完了するのに、彼らが使っている洗濯機はローラー付きのタルのような旧式洗濯機。一度洗濯するのに、数時間かかるのは当たり前。でも、洗濯の方法を変えようとしません。ドライブスルーで食べ物が買えるファーストフードや、家事の手間をはぶく最新の電化製品に囲まれた生活をしていると、「早いこと」はそのまま価値となり、お金を払ってでも得たいと思うようになります。インターネットもモバイル回線よりwifiを好み、電車はなるべく急行に乗りたいし、だしをとるのは時間がかかるからだしの素を使う・・・。当たり前のように「効率化」「スピード」を私たちは選択しますが、アーミッシュの人たちはそうではない。たとえ大変でも、手間がかかっても、自分たちの信念のため、時間をかける。その姿、その決断を、私は気高いと感じます。

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シーンとした家の中

子どもが遊んでいるときをのぞいて、アーミッシュの家の中はシーンとしています。外を走る車の音は聞こえないし(車がほとんど通らない)、家電製品が動くエンジン音もありません。極め付けは、音楽やラジオ、テレビがないこと。誰でもアーミッシュの家に上がればまず、この静けさに気をとられると思います。普段、あまり気がつきませんが、現代の生活って「音」が本当に多いのですね。「静けさ」って、作ろうと思ってもなかなか作れません。音の多い世界に住んでいる反動からかもしれませんが、静けさに価値を感じるのは私だけでしょうか。

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ずっしりと長持ちしそうな家具

アーミッシュコミュニティには、家具屋さんが多いです。なぜかというと、全米で「アーミッシュ家具」が評価されているから。細部にまでこだわりが宿り、基本的にはすべて手作業により完成します。丈夫で、使い勝手が良く、シンプルなデザインが人気の理由。サイズオーダーやカスタムオーダーを請負い生計を立てているアーミッシュも多いです。いくつか家具屋さんを見て周りましたが、私が日本の自宅で使っているような「○ケア」や「○トリ」「○天」で買う家具とは、やっぱり存在感が違いました。そして、重くてしっかりしてます。日本の小さい家には合わないかもしれませんが、一生使う前提で、1アイテムくらい輸入したいな。間違いなく一生使えそうですし、一生どころか何世代にもわたって受け継がれる家具が多いようです。いつか、アーミッシュの家具で揃えた部屋に住みたい。

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商売っ気を感じないお店の看板

アーミッシュが営むお店の看板は笑っちゃうほど地味です。日本、特に都市部には看板があふれています。いかにインパクトがあって、キャッチーで、目立って、人の関心を引けるかが価値ですが、アーミッシュの世界ではなるべく目立たないようにしようという意思する感じます。そのくらい、分かりづらい! でもそれが、彼らの価値観。目立つことは虚栄心につながるので、あまり良しとされていません。看板を設置する目的は集客というよりも、迷わないようにするための目印・道しるべ。控えめすぎるので私のような新規客には不親切ですが、そんな不親切さにむしろ彼らの芯のあるスタンスを感じます。

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化粧っ気のない女性

最後に挙げるのはやはり、女性の姿です。言葉が悪いかもしれませんが、いわゆる「ケバい」女性が皆無なのもアーミッシュコミュニティの魅力だと感じてしまいました。私自身、ほとんど毎日メイクをしているので人のことを言えないのですが・・・。一般的な社会ではほとんどの女性が化粧をしていますよね。化粧をしないで外出することは、勇気のある行為ですらあります。メイクは当たり前になっていますが、よくよく考えてみたら、本当に必要なのかどうか・・・。化粧という行為にはしばしば、「人に綺麗に見られたいという虚栄心」が見え隠れします。そういう観念から解放されているのが、アーミッシュの女性たち。彼女たちにとって、美しく見られること、可愛く見られること、綺麗に見られることは価値ではありません。なので、そこに時間とお金を費やすことをしません。彼女たちは「美」を演出していませんが、容姿は往々にして、綺麗です。シンプルで上品なデザインの服を着ている清潔感、もともとの顔立ちが端正であるというアドバンテージはあるにせよ、メイクをしなくても、宝石を身につけていなくても、ブランド物の服を着ていなくても、美しさを感じました。


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