2020年10月、アーミッシュからの手紙

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オハイオからの手紙を受け取る

2020年10月4日、オハイオ州に住むアーミッシュの家族からエアメールが届きました。
真っ白のシンプルな封筒には、アメリカの国旗のビジュアルの切手が貼られています。
私がフィールドワークしているオハイオ州のホルムス郡からの手紙で、オハイオの大都市、クリーブランドのスタンプが押されていました。

差出人は、Grace Yoder。
私がホルムス郡に行くたびに宿泊するB&Bを営んでいる女性です。
5人の子どもと旦那さんと、家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、訪問するたびに子ども達の成長を見ることが私の楽しみにもなっています。

とっても優しく、フレンドリーな家族で、アーミッシュの暮らしぶりを丁寧に説明してくれます。また、私の日本での暮らしぶりも知りたがってくれて、彼らが私の話を興味深そうに聞いてくれる事が嬉しいのです。

Graceからもらった手紙には、アーミッシュの日常的な暮らしに関する話題がたくさん詰め込まれていました。アーミッシュ文化を知りたい人の一助になりそうに思いますので、ここでシェアしたいと思います。
(もちろん、手紙の中の個人的な情報などは伏せておきます)

Graceからの手紙の内容

麻葉へ
オハイオ州、マウントホープからこんにちは!
アメリカから遠く離れた世界・日本ではどんな暮らしをしていますか?
私達は時々、麻葉の事を思い出してますよ。Wanda(娘)は、夜眠る前に、「マハはそろそろ、起きる準備をしているかな?」なんて言ってます。

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Lynn(息子)は今、ちょうど私の隣に立って、この手紙の一言一句を声に出して読み上げているの。
Lynnはもう2年生、JayBrian(息子)は8年生になりました。Wandaは、次の春に8日間、Kindergarden(幼稚園のようなもの)に行きます。
私たちのKindergardenは、たった数日間で終わるのよ。

この夏は、とっても良い夏でした。神様に守られて、健康に過ごしています。私はずーっと、忙しくしてたから、ただ座って、こうしてあなたに手紙を書く事がしたかったの。
そうしたらJoni(旦那さん)が、子ども達を連れて、マウントホープの家畜オークションに行ってくれたの。おかげで、手紙を書けています。

今年は、毎年恒例のガレージセールを10月初旬の1週間、開催することにしました。開催に向けて、古材でハロウィン用の飾り物を作ったり、Joniの事を私も手伝っています。
これからもっと品物を作っていく予定。例えば、テーブルトレーとか、マグネット付き鍵収納ケースや、カッティングボードとか……色々です。

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麻葉も裁縫はしてるかしら? 今年の夏は時間がなくて裁縫ができなかったので、ガレージセールが終わったらやりたいと思ってます。本当に裁縫って、楽しいわよね。

今年の瓶詰めは、そろそろ終わりに近づいています。あともう少し、トマトジュースを作ったら終わり。今年は、桃、ピザソース、チリスープ、グリーンビーンズ、サルサソース、梨、アップルソース、ビーツ、ピクルス、ジャム、ジェリーの瓶詰めができました。

元気でね。
神様の御加護がありますように。

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Grace

コロナウィルスの影響があるものの、日常生活に戻るアーミッシュ

手紙の中に直接「コロナウィルス」の文字は見当たらないものの、彼女達の生活にも多かれ少なかれ影響が出ている事が伺えます。
毎年恒例のガレージセールは、いつもなら9月の前半に開催しています。今年はコロナの影響で遅れての開催となったのでしょう。

また、ホルムス郡ではアーミッシュのオークションなどはすべてキャンセルになっていました。Joniが子ども達とオークションに行ったとのことだったので、現在では再開されたという事ですね。

マウントホープのオークションの情報は、非アーミッシュに向けてオンラインでも告知されています。確認したところ、こんな記載がありました。

Due to COVID-19, we ask anyone wanting to attend the Mt Hope Auction, do so at your own risk. Do not come to any of the sales or events if you are concerned about exposure: You are entering a facility with other persons and may be exposed to the virus.

No Spectators permitted in Sale Ring. Buyers only. Please wear your mask.

簡単に訳すと、こんな感じ↓

コロナウィルスのため、自己責任での行動をお願いします。感染を懸念される方は来場をお控えください。会場では、ウィルスに触れる可能性があり得ます。
観客はオークション場への入場は禁止されています。マスクを着用ください。

アーミッシュ家庭の仕事

アーミッシュの家庭はどの家も自家菜園を持ち、文明の利器の利用を制限し、衣食住の自給自足を心がけています。
夏になると野菜や果物が一斉に実ります。毎日のように新鮮な作物を収穫し、せっせと保存食に変えるのが女性たちの仕事。
アーミッシュの女性が集まると、「先週はちょっと早いけどりんごを瓶詰めにした」とか、「今週のうちにトマトを収穫してトマトジュースにしたいけど、来週に持ち越しになってしまうかも」とか、
瓶詰めの話題が持ち上がります。

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そして、作物の収穫が終わる10月頃から、やっと落ち着き、冬支度がはじまります。自家菜園の仕事もほとんどなくなり、気温も下がり雪も降ります。
この時期は、家の中でキルト作りをしたり、家族のメンバーの服作りに時間が費やされます。
そして、「この冬はズボンは4枚作った」とか、「キルトを1枚仕上げた」とか、冬の間の成果を家族や友達と語り合うのです。

Graceも、季節に合わせて瓶詰め(保存食)作りや裁縫を日常的に楽しんでいます。身の回りの衣食住を、自分の手で作り出し、それを楽しむ様子が手紙から伺えて、心がポっと暖かくなりました。

そして、子ども達の成長の早いこと早いこと。Wandaが夜寝る前に私の事を思い出してくれるのは、日本とアメリカの「時差」が彼女にとって謎めいていて、衝撃的だからでしょう。
それは、Graceにとっても同じです。彼女にはじめ、日本の時差の話をしたら、「よく分からないけど、面白いわね」と笑っていました。

アーミッシュは学校で時差の仕組みを詳しく習いません。地球の地軸が傾いているとか、自転と太陽の位置とか、そういう科学的な知識はあまり重要視されていません。

そのため、私が日本から来て、日本からは飛行機で12時間かかり、時差が13時間もあるという事を伝えると、面白がるアーミッシュが多いです。特に子どもは、目を丸くして不思議かるから可愛いです。

でも、よく考えてみたら、私が時差の仕組みを知っているからと言って、すごい事は何もありません。私には時差を変えることも作り出す事もできないのです。さらに、なぜ、地球が存在し、傾いているのかまでは分からないのです。

時差という物があるという事実だけを知っているアーミッシュと、いったいどんな知恵の差があるというのでしょうか。

それよりも、地球の土地の季節による変化を熟知し、その季節に合わせて作物を生産し、生産した作物を無駄なく瓶詰めにし、冬の間の食糧を確保しながら衣食住を自給自足をするための知識。
そっちの方を知っている方が、人生に直結的に役立つのではないでしょうか。

保存食作りというのは、それ相応な知識とテクニックが必要です。何せ、食材を1年以上も新鮮なまま保存するのですから。
食材の種類によって作り方や注意する事も異なります。アーミッシュの人たちは、野菜や果物だけでなく、庭でつぶした牛や豚の肉を調理して、保存食に変える技術をも継承しています。

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彼らの保存食のテクニックは、私の今、学びたい事の一つです。

次にアーミッシュカントリーに訪問できるのはいつになる事やら。1年後なのか、2年後なのか……
いつになるかはまだ分からないけど、次はGraceの瓶詰め作りを手伝わせてもらおうと思います。そんな事を、お返事の手紙に書いて送ろうと思います。

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