【TED翻訳】ビジネスマネージャー達が羨むアーミッシュのチームワーク

「アーミッシュのチームワーク」をテーマにしたTEDx Talks

ここ数年ですっかり日本人にも定着したTED。私もたまに、見ています。
そして、TEDのスタイルを踏襲してインディペンドにスピーチ会を開催するTEDxというイベントも、各地・各団体に広がっています。

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このTEDxで、アーミッシュのチームワークをテーマにしたスピーチがありました。
私の知り合いの大学教授でもあるJoe Donnermeyerさんのスピーチです。

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彼はオハイオ州立大学の教授で、地方犯罪学が専門ですが、アーミッシュ文化についても研究を続けています。幸運なことに、日本に住んでいるオハイオ州立大学の卒業生が彼のことを紹介してくれました。

やりとりの過程でこのTEDx Talksを教えてもらったのですが、本当に興味深い。アメリカ人から見たアーミッシュのイメージがよく分かるし、彼らがいかにアメリカという社会の中で特徴的なのかも理解できます。
ぜひアーミッシュに興味のある日本のみなさんにも知ってほしいと思い、翻訳を試みることにしました。
(TEDは日本語訳を表示できますが、このTEDxのスピーチには日本語訳がないのです!)

ということで、今回はTEDx Talksの「A Leadership Lesson from the Amish」をスピーカーであるJoe Donnermeyerの許可のもと、翻訳した記事を公開したいと思います。

アーミッシュから学ぶ「リーダーシップ」

世の中のあらゆる社会の文化や歴史を理解するために必要な基本的なこと。それは、その文化の「価値観」を理解することです。
価値観とは、その文化を担っている人たちが、大事にしているものに他なりません。

個人主義という価値観を例に挙げてみましょう。ドイツや日本、イギリスなどの国と比較したとき、私たちの住むアメリカは、「個人」に特別に価値を置きます。つまり、他の誰とも違う自分自身の選択をする、という自由です。この価値観はとても強力で、アメリカのあらゆるところで見受けられます。例えば、”キングジェームス”が王様でないことなんて誰でも知ってますよね? 彼はアメリカのバスケットボール選手ですよね。(訳注:国王の名前を付けられるほど自由ということ)

どんな社会にも「サブカルチャー」というものがありますよね。私たちアメリカの”サブカルチャー”は、私たちとは異なる価値観があって「献身」や「協調性」を強調します。それは、行きすぎた個人主義とはまったく反するものです。もちろん彼らは異なる価値観を持っています。それが、アーミッシュです。

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アーミッシュといえば、あの(ナンセンスでくだらない)TVのリアリティーショーを知っているって?  であれば、あなたはアーミッシュのことを何も知らないことになります。本当ですよ。どうせ知っていることと言ったら、アーミッシュの風貌、質素な服とか、馬で動かす耕作機とか、バギーとか、ペンシルバニアダッチとかでしょう。

本当の意味でのアーミッシュの特徴とは、彼らの内面にあるんです。献身と協調性に重きを置くという内面性です。これこそがアーミッシュがお互い結束するための要素であり、彼らの文化を支える大切なものなのです。

アーミッシュの共同体は成功を収めています。彼らの子どもの90%以上は、24歳前後のしかるべき年頃になると洗礼を受けます。それはつまり、生涯アーミッシュの独特なライフスタイルを貫くことへの決心を表すのです。
この決意は、抽象的でぼんやりしたものに対してではありません。しっかりと実体のある、具体的なものに対する決心なのです。つまり、彼らの教区に対する決心です。

アーミッシュの各教区は、24家族ほどで構成されています。これがどういう意味か分かりますか? 彼らは教会の建物を持ちません。なので、日曜の礼拝は教区内のメンバーの家で行う持ち回り制です。つまり、自宅から礼拝が行われる家にバギーや徒歩で移動できるように、近所に住む必要があります。

教区のメンバー同士が近所に住み、定期的にお互いの家で礼拝を行う。当然教区の家族同士の関係は深くなります。だからこそ、連帯感が生まれ、結束力が増すのです。

自分たちの文化を守るために

アメリカの31州とカナダの2エリアに、合計2,200のアーミッシュ教区があります。この教区は500のアーミッシュコミュニティを形成し、各地に散在しています。

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すべての「サブカルチャー」はメインカルチャーに囲まれています。アーミッシュももちろん、個人主義を唱える私たちアメリカ人に囲まれていますね。彼らは団結し、自分たちの文化・価値観を守らなくてはいけないし、次の世代につなげていかなくてはいけない。アーミッシュの共同体がそれに成功している理由には、2つの背景があります。

まず1つ目が、アーミッシュのそれぞれの教区が自主的に成り立っているという背景。
それぞれの教区は、司祭と二人の牧師、補佐役、それに24家族ほどで成り立っています。上席のメンバーは教区の他メンバーから選ばれます。信じがたいかと思いますが、彼らはくじ引きで選ばれるのです。この方法は、『使徒言行録』という新約聖書中の一書の記述に従っているからだそうです。

2つ目は、若者たちが洗礼を受ける際、彼らは自分が属する特定の教区に対して聖約をたてるという背景です。若者は、その教区の規律に従うことを誓うのです。

アーミッシュの教区には、なんのヒエラルキーもないし、議会からの指導もありません。官僚的な組織ではなく自治であるため、自分たちのルールは自分たちで決めるのです。ただし、車を持とうとしない限りは。(訳注:車を持ったらアーミッシュではないから)

アーミッシュの礼拝に参加して驚いたこと

アーミッシュの礼拝は参加することができるんですよ。私も実際、何度か参加したんですが、その時は納屋で行われました。馬や牛がいる環境で、私がまったく分からないペンシルヴァニアダッチで。

もう本当に困りました。スタバの巨大なスキニーバニララテを持って来ればよかったと後悔しました(笑) もっとも、そんなものは場違いなアイテムなんですが。でも、個人主義を重視するアメリカ社会から来た一人前の大人が参加している方が場違いですよね。

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このチャーチサービスですが、みんなが無言のまま協力し合って執り行われていました。特徴的だったのは、みんなで賛美歌を合唱するのですが、歌集には楽譜がついていないこと。歌詞だけが書かれているのですが、全員がきちんとメロディーを覚えているんです。すべての賛美歌、すべての単語、すべての音節のイントネーションを全員が理解していました。

礼拝が終わると、若い男女が椅子を片付けはじめます。この椅子は、次の礼拝を行う家に運ばなければいけません。驚いたのは、誰の指示もないことです。一人一人が何をするべきか把握していているので、彼らは指示なしで動けるのです。
さらに、3歳くらいの女の子と男の子までも自主的に動きます。彼らは聖書などをウッドチェストに片付けていました。

ビジネスマネージャーが羨むアーミッシュのチームワーク

このアーミッシュのチームワークを見たら、ビジネスマネージャー達は羨ましがると思いますよ。利益を生むためにはチームワークが大事ですから。指示がなくても一人一人が黙々と役割をこなすアーミッシューー。これこそが、経営管理というものなのでは?

本当に彼らチームワークは素晴らしかったです。私たちの社会の中でも「協力体制」というのは大事ですよね。彼らから何か学べるものはないでしょうか?

例えば、世の中のスポーツコーチたちは、チームワークやチームスピリットが勝つために重要な要素だと認識していますよね。実力はあるのにチームワーク・チームスピリットに欠けるがために試合に負けてしまうチームはよくあります。

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軍隊でも一緒です。新米兵士は、まず軍への忠誠を叩き込められます。これは、実際の戦闘で生き抜くために必要なことです。

私たちの社会のトレードマークは「個人主義」ですが、ビジネスや軍隊ではチームワーク・チームスピリトが重要視されるのです。これって、皮肉なことだと思いませんか? 「個人主義」を尊重する私たちの社会で、チームワークやチームスピリットを学ぶためのセミナーやワークショップが至る所で開催されているのですから。
アーミッシュの社会ではすでに当たり前となっているチームワーク・チームスピリットを得るために、私たちは何億円もお金を使っているってことですよ。

こう考えると、アーミッシュのライフスタイルから私たちが学べることが存分にありそうですね。

若いアーミッシュ男女の「出逢いの場」とは?

数年前、アーミッシュについての授業の一環で教え子20人を連れてアーミッシュコミュニティを訪れました。ここにいる人達は知っているかもしれません、オハイオ州のBellcentreという小さな村です。ある木材工場に立ち寄って、アーミッシュの人たちの仕事ぶりを見学させてもらっていました。
ほとんどの従業員が16,17,18歳の独身の若い男性だったのですが、生徒の一人が「どうやって女の子と出逢うんですか?」という質問をしました。

男性たちはこう説明してくれました。(生徒の20人中15人は女性だったので、なんというか、魅力的に映ったからかもしれません笑)

「日曜の午後、礼拝の後に歌の会があって、そこに独身のアーミッシュ男女が集まります。そこで、一緒に歌を歌うんです。部屋の片方に女性、片方に男性が集まって、歌の掛け合いをして楽しみます。」

女性徒が続いてこう聞きました。「どんな歌を歌うんですか?」アーミッシュの若者は「えーっと、今から見せてあげますね。」と言って、みんなで後ろを向いて話したかと思うと、歌い始めました。その歌は、ボーイスカウトやガールスカウトでよく歌うような歌です。

そして、知っている人もいるかと思いますが、有名な「Bingo」の歌も歌ってくれました。

素敵ですよね。でも、このあと何が起こったかと思います?

アーミッシュの若者たちはみんな顔に笑みを浮かべながら、私の生徒たちにこう言ったんです。「次は君たちの番だよ」と。

私は自分の生徒たちがどんなふうに反応するかちょっと心配でした。だって私たちは個人主義社会で生きるメンバーですから、(アーミッシュのようにまとまりを持って行動できるかどうか……)。

生徒たちは少しの間集まって何やら相談して、歌を歌いました。歌った歌は、「献身」を象徴する歌です。みなさんのほとんどの人が分かるはずのその歌は、「Carmen Ohio」です。
素晴らしいと思いませんか?私は生徒たちを本当に誇りに思いましたよ。

このスピーチの結論を言いますね。私たちノンアーミッシュには「チームワーク」というものが必要です。だってチームワークが無かったら、私がこうかけ声をかけたとき、誰か答えてくれますかね?

「OH!」 ー「オハイオ!」 「OH!」ー「オハイオ!」

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